【映画レビュー】ジョゼと虎と魚たち・アニメ(ネタバレ)

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小説が原作のアニメ版。実写化もされている。アニメ版は、小説・実写化とは異なる結末や設定があるようだ。

解説

2003年に犬童一心監督により実写映画化された田辺聖子の同名小説を、新たに劇場アニメ化。大学で海洋生物学を専攻する恒夫は、メキシコに生息する幻の魚を見るという夢を追いながら、バイトに勤しむ日々を送っていた。そんなある日、坂道を転げ落ちそうになっていた車椅子の女性ジョゼを助ける。幼少時から車椅子で生活してきたジョゼは、ほとんどを家の中で過ごしており、外の世界に強い憧れを抱いていた。恒夫はジョゼと2人で暮らす祖母チヅから彼女の相手をするバイトを持ち掛けられ、引き受けることに。口が悪いジョゼは恒夫に辛辣に当たるが、そんなジョゼに恒夫は真っ直ぐにぶつかっていく。「坂道のアポロン」の中川大志が恒夫、「デイアンドナイト」の清原果耶がジョゼの声をそれぞれ演じる。テレビアニメ「ノラガミ」のタムラコータロー監督がアニメ映画初監督を務め、「ストロボ・エッジ」の桑村さや香が脚本を担当。「僕のヒーローアカデミア」のボンズがアニメーション制作。

ジョゼと虎と魚たち(2020・アニメ版) : 作品情報 – 映画.com (eiga.com)

ストーリー(ネタバレあり)

気の強いわがまま車椅子ガールと留学して海に潜りたい青年の物語。

大学生の恒夫は、留学するためにアルバイトを掛け持ちし、スペイン語を熱心に学び、論文や自己PRに必死で取り組んでいた。バイト先には、仲の良い舞と隼人がいた。

ある日、バイトの帰り道。ストッパーが効かなくなった車椅子に乗る女の人が坂道をすごい速さでくだってきた。恒夫は、自分の身を呈して彼女を助ける。

せっかく助けたのに、彼女は触るな!ときつく当たってくる。一緒にいたのは、彼女のおばあちゃんで背中を押されて車椅子から手を放してしまったそうだ。

「外には猛獣がいて恐ろしい」

と言って、今後の散歩はなしだと宣言する。

帰路は恒夫も一緒の方向だったため、会話はすべて聞こえていた。

彼女たちの家は、恒夫の家よりも早く着いた。別れようとすると、おばあちゃんが上がっていけ、と誘う。そこで、世間話の延長で自分の夢の話をする恒夫。留学のためにアルバイトを増やそうとしていることも話した。そんな会話を避けるような車椅子の彼女。

彼女は、自分をジョゼと呼ぶように言った。

帰り際、おばあちゃんは恒夫に、働き口を紹介すると言った。

留学費用を稼ぎたい恒夫は、誘いに乗る。しかし、後日話を聞くと、そのアルバイトはジョゼの面倒をみることだった。

 

一旦は、そのアルバイトを引き受けた恒夫。

外出は禁止の決まり事の中、二人の日常が変わっていく。

最初は警戒していたジョゼ。様々なことを恒夫に頼む。ある時は畳の目を数えさせられたり、ある時は四葉のクローバーを10本集めさせたり。

ジョゼのわがままに嫌気がさした恒夫。この仕事を辞めようと決心し、言いに行くがジョゼの姿がなかった。おばあちゃんも出かけていて、ジョゼの行方は分からない。捜索する恒夫。

実は、ジョゼはジョゼで悩んでいた。恒夫にわがままを言ったことで自分の人生が良くなっていくと思っていたが、そうはならなかった。だから自分で動かないとダメなんだと気づき行動したのだった。

ジョゼは海に行こうとしていた。捜索していた恒夫は、踏切を無理やり渡ろうとするジョゼを見つける。どうしても海に行きたいと勝手に車椅子を走らせるジョゼ。恒夫は、最初帰ることをすすめたが、どうしても行きたいジョゼの強い思いを受け、協力することに。おばあちゃんには、すぐに帰ると恒夫が一報を入れた。

恒夫が電話をしている間に、切符を買おうとするジョゼ。しかし、今まで過保護に暮らしていた彼女は、切符の買い方もままならず、近くの人に声を掛けても聞いてくれやしない。人によっては、車椅子を邪魔だと態度に表す人まで。

ジョゼは落ち込み、帰ろうとする。そんな彼女に恒夫は海に行こう!と手を差し伸べてくれたのだった。

 

 

海に着く。

車椅子で砂浜に挑むが、タイヤが砂に絡んで進めなくなる。それでも進もうとする彼女は、砂浜に倒れるも、這って海に向かう。

どうしてそんなに海に行きたいのか、尋ねる恒夫に、お父さんに海の味はどんな味かと質問されたのに、小さいころ波が怖くて味が分からないまま、離れ離れになってしまった。もう伝えることはできないけど、今が最初で最後に確認できるチャンスかもしれないからと必死に波打ち際まで進むジョゼ。

恒夫は、ジョゼの過去や体のハンデでやりたいことも出来ずに生きてきたことを察する。彼女を抱き上げ服のまま海に連れていく。彼女の顔に波のしぶきがかかる。しょっぱい・・・。ジョゼは、海が本当にしょっぱいことをはじめて知ることが出来たのだ。無邪気に喜ぶジョゼはキラキラとまぶしかった。

 

 

家に帰ると、外は暗く遅い時間になっていた。もちろん、おばあちゃんには叱られ、外出禁止!!と強く念を押される二人。

しかし、ジョゼは出かけられたことへの喜びが大きく、興奮冷めやらぬ状態だった。ジョゼのそんな様子に、恒夫はほかに行きたいところはあるのか尋ねる。すると、おばあちゃんは1時~3時の間にお昼寝をしているんだ、と教えられる。

それからは、限られた時間で外出を楽しむ二人。

外の世界に臆病で、強がっていたジョゼは、新しい世界が広がり、他の人たちと同じように生きられていることを楽しんでいた。ある日、図書館に行く。本の海に感動するジョゼ。実は、ジョゼとは好きな作家の本に出てくる主人公の名前であった。

図書館で働く女性が、ジョゼに話しかける。借りようとした本の作者(ジョゼの好きな作家)がわたしも好きだと。友だちになれた二人。恒夫は嬉しく思う。

 

 

楽しい日々は過ぎていく。ジョゼの描く絵が素敵なことや恒夫がジョゼの見栄をはった嘘を優しく受け止めたり、行く先々での思い出は二人の距離も近くした。アルバイトの話になり、恒夫のアルバイト先に連れて行ってもらうジョゼ。

バイト先には、ジョゼのことを話していたので、隼人も舞もすぐに気づき挨拶をした。だが、舞は恒夫に好意があった。それは、ジョゼにも伝わった。健常者の舞と楽しそうに話す恒夫。自分の立場に心がモヤモヤするジョゼは、恒夫にきつく当たる。

 

それから、二人には距離ができた。おばあちゃん伝手で、恒夫は来なくて良いと言われてしまう。

そんな時、恒夫が望んでいた留学先が決まった。喜ぶ恒夫。アルバイト先にもそれを告げると、あと半年か・・・と寂しそうな店長の言葉に、なにかを感じた恒夫。

その夜、恒夫はジョゼに会いに行った。自作した、魚の形をしたスタンドライトを手に。

ジョゼとの時間はあと少しなんだと思う恒夫は、留学のことを伝えようとするが、タイミングが合わず伝えられなかった。

 

 

そんな矢先、おばあちゃんが亡くなった。

生前、恒夫とジョゼに外出禁止をだしたが、二人がこっそり抜け出していたのは知っていた。どんどん外にでようと積極的に自分の可能性を広げていくジョゼを見て、道頓堀のグリコみたいに走り出しそうだと喜んでいた。結局、二人が堂々と外出をし始めた時も、グリコのポーズで喜んでいた。

ジョゼが外との繋がりを大切にしだしたことに、安堵したのだろうか。

おばあちゃんを失い、落ち込むジョゼ。恒夫へのバイト代も払えないことを伝える。しかし、恒夫はそれでも側にいようとしてくれていた。

 

おばあちゃんがいなくなり、ジョゼは一人だ。留学のことも打ち明けられずにいた恒夫は、悩んでいた。いつも上の空。そんな様子を見兼ねた舞が、直接ジョゼに会いに行く。あなたのせいで、恒夫が苦しんでいる。もう解放してあげて。あなたといるのは同情だ。と冷たく厳しい言葉を突きつける。

留学のことを聞かされていなかったジョゼは、恒夫との関係を終わりにすることを決める。

 

最後の仕事として、海に行きたいとお願いする。

海に着くなり、涙がこぼれるジョゼ。

ジョゼとまだ関わっていたい恒夫と、拒むジョゼ。

健常者には、わたしの手が届かない気持ちなんて分からない!と強く言い、その場を去る。

雨が降り始める。土砂降りの雨。

しばらく放心状態の恒夫だったが、ジョゼを探す。

運悪く横断歩道の途中で、車椅子のタイヤが絡み動けなくなっていたジョゼ。コンクリートが割れて、段差になっていたのだ。信号は赤になり、車が動き出す。恒夫は、ジョゼが動けなくなっていることに気づき、赤信号の中、道路に飛び出し助けようとした。飛び出してきた恒夫を避けようとする車。しかし雨でスリップし、止まれなかった車に恒夫は轢かれてしまうのだった。

 

 

交通事故に遭い、足に大きな傷を負った恒夫。

留学をして、海に潜ることを夢見ていたのに。もしかしたら、今までのように足が動かせないかもしれないと聞かされる。さらに追い打ちをかけるように、入院で留学の時期がずれてしまうことになり、受け入れ先が他の学生を受け入れたいと言ってきた。

恒夫は、失望感で塞ぎこむ。ジョゼも責任を感じて、入院中の恒夫に会いにいくことも出来なくなってしまう。

舞は、恒夫にまた元気に笑ってほしいから、好きなプリンを差し入れたり、楽しくはなしかけたりしていたが、反応が薄い恒夫。外に出ないかと、散歩に誘う。散歩中に、自分はもっと強い人間だと思っていたと、弱音を話す恒夫。そんな恒夫の支えになりたいと、好意があることを告白する舞。断られることは分かっていたのか、恒夫に返事をさせなかった。

 

 

やはり、恒夫の心にはジョゼがいる。

舞は、ジョゼに会いに行った。彼女に、夢諦めた恒夫を私に惚れさせて幸せにする!とケンカを売った。

ジョゼは、恒夫は諦めない人だ!と反論する。それが彼だ、と。

 

ジョゼは考えた、自分にできることをしてあげたいと。

図書館で働く友だちと協力して、一つの紙芝居を完成させた。

隼人に頼んで、恒夫を図書館まで連れてきてもらい、みんなの前で紙芝居を読むジョゼ。

とても感動的な紙芝居に、無くしていた思いに気づく恒夫。

それからは、リハビリを頑張り退院を迎えた恒夫。

 

 

退院日に、ジョゼにお迎えを頼んだのに、彼女は時間になっても現れなかった。

松葉杖を付きながら彼女の家に行くと、片付けられた家と段ボールがたくさんあるだけで、姿はなかった。

必死に探す恒夫。

ジョゼは恒夫に合わないよう、街中をさまよっていた。坂道の上、前方不注意の人にぶつかられてしまう。また坂道を、ストッパーの利かなくなった車椅子で下るはめに。今度こそ、もうだめだ。と思った時、探していた恒夫が、ジョゼに気づき助けてくれた。

ジョゼは、もう恒夫の迷惑になりたくないと、自分ひとりで生きていこうと決心するために、恒夫の迎えを辞め、さまよっていた。恒夫は、ジョゼが可哀想だから一緒にいるんじゃない、一緒にいたいと自分が思うから一緒にいたい。と告げる。二人はめでたく結ばれ、新たな人生がスタートするのでした。

 

 

感想

原作は読んだことはなく、アニメ版のみです。

ハッピーエンドの下りだったのと、勇気をもらえる内容に感動しましたが、原作は障害のある主人公との恋愛は難しいという結末らしいです。

正直、ハッピーエンド好きなわたしにはアニメ版で良かったな、という気持ちです。

障害のある主人公の、外の世界への恐怖と外の世界に出る勇気は障害がないわたしたちも生活をしている上で感じてしまう部分だな、と思います。長く生きていれば、他人からされた嫌なことがトラウマになり、外の世界全体に恐怖を感じてしまったり、自分の努力をみてもらえていない苦しみに、頑張ることすら勇気が必要になる気持ちなど、共感してしまう部分もたくさんありました。

最後のほうで、ジョゼが作った紙芝居がでてきますが、本当に素敵でした。あえてここでは内容を書いていませんが、ぜひ直接ご覧になって感動してもらいたいなと思います。

また、おばあちゃんのキャラがすごく好きで、主人公のジョゼをとても愛していて、厳しくも優しいところ、そして外出していることを知っていても、彼女の成長のためにそっと見守る様子に心打たれました。お茶目にグリコのポーズをとるシーンが好きでそこだけ何度も見ていたいくらいです。

それと、恒夫がとにかく出来た男すぎて、こんな人現実世界にいる???と思うほど、優しさと強さのある人物でした。エンドロールのあとのエピソードで、余計に好きになりました(笑) 行動も言葉もイケメンで、こんな人現実世界にいる???(2回目w)と思ってしまいました。

全体を通して、とてもピュアな内容ですね。

現実的ではないかもしれないですが、わたしは好きでした。おすすめしたいです。

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